穢れなき獣の涙
◆散華-さんげ-
*猛炎のごとき
「オレたちはどうすればいい?」
二人のやり取りを空から見ていたマノサクスが降りて尋ねる。
「翼を重点的に攻撃」
「どんとこーい!」
笑顔で応え、セルナクスに作戦を伝えに飛んだ。
「で、あたしたちは何をすればいいかしら」
「人々に伝達してもらいたい」
「おやすい御用よ!」
モルシャは伝えなければならないことをしっかりと聞き、レキナたちに声をかけてコルコル族のみんなは散らばった。
ネルサの姿に動揺しつつも、それぞれが成すべき事を見つけて動いている。
これなら勝機はある。
「ヴァラオム」
[うむ]
ヴァラオムは応えて体勢を低くし、シレアを背に乗せた。
[ゆくぞ、我が友よ!]
声を張り上げ、翼をはばたかせて大空へ駆け上る。
シレアは巨大な岩のように、どっしりと地面に爪を食い込ませるネルサの体を上空から眺めた。
おおよそ、人間などが敵う相手とは思えない。
それでも、抗わなければ先はない。