穢れなき獣の涙
[長きにわたり、継がれた血の力は凝縮され。いま、まさに歪んだ形で現されている]

 終わらせなければならない。

 どんな犠牲を払おうとも。

「この世界に生きる者の努めか」

 目を眇めてつぶやく。

 それは、とても酷く辛い使命だ。

[虫けらどもがぁー!]

 ネルサは抵抗する者たちに怒号を浴びせ、牙がずらりと並んだ口を大きく開いた。

「息(ブレス)が来るぞ!」

 口々に叫び、頭の向いている方向を見極める。

 尖った巨大な口から真っ赤な炎が吐き出され、逃げ切れなかった人間のみならずモンスターもその猛炎に身を焦がした。

 肉の焼けた匂いが風に運ばれ、辺りはよりいっそうと殺伐さを増す。

「くっそ!」

 エンドルフは苦々しく漆黒のドラゴンを睨みつけ、戦斧を掲げて気合いを入れた。




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