穢れなき獣の涙
[さて、友よ。どうするかね]
ヴァラオムは無言で見下ろすシレアに問いかける。
そして口惜しげにネルサを見つめ、その瞳に憂いを浮かべた。
[何故(なにゆえ)に、あのような深淵なる姿になったのか]
怒りと憎しみがネルサをどす黒く染め、大地までをも黒く変えてゆこうとしている。
[本来なれば、彼らの体色は美しい鉄紺(てつこん)であろうに。なんと嘆かわしい]
漆黒のドラゴンからは、かつて備わっていたであろう神々しい輝きは失われ、ただただ呪いの言葉を繰り返す魔物と化している。
[今こそ、そなたに渡すものがある]
「うん?」
ヴァラオムがひと声あげると、シレアの胸にあるペンダントが輝きを放った。
[我の炎で鍛えた剣は、持つ者の力を増大させる]
そなたの意志と、その身に流れる血が持つ力の間に隔たりは無い。
己の力を信じるのだ。
[先を示せ!]