穢れなき獣の涙
「乗ってみるか」

「えっ!?」

「だ、だいじょうぶ?」

「噛みつくことはない」

 それを聞いた双子は安心したのか、早く早くとシレアにせがんだ。

「お肌すべすべなのね」

「セシエはやく~。次はあたし!」

 裏口から水を汲みに出たカナンは、そんな妹たちをしばらく見つめていた。




 ──朝食を済ませ、カナンはシレアの前に紅茶を差し出す。

「ありがとうございます」

「ん?」

 礼を言われるようなことをした覚えはないと眉を寄せる。

「あの子たちのあんな顔、久しぶりに見たの」

「ああ……」

 そういうことかとコップを手にした。

 まともな紅茶を飲むのは久しぶりのためか、漂う薫りに顔がほころぶ。
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