穢れなき獣の涙
*穢れなき獣の涙
「なんだ!?」
ギョッとしたエンドルフは、大きな影を見上げてさらに驚く。
赤やオレンジの鱗に覆われた体表に鋭い眼差し。
空を駆るコウモリに似た翼──それはまさしくドラゴンだ。
ぱっと見ただけでも十体はいると窺えた。
「うへぇ」
[我らも加えていただこう]
巨大とまでは言えないが、それでもエンドルフの頭二つ分は視線を上げるほどの高さがある。
「どういうことだよ」
唖然として問いかけると、そのドラゴンは頭を上げ、
[なんとも暖かな輝きが見えたのでな]
この世界を守らねばと思ったのだ。
[静観を決め込むはずであったのにのう。不思議なものよ]
まるで、我らに流れる血が内側から訴えかけているようで、それはあたかも、悲痛な叫びにも似た哀しいものであった。