穢れなき獣の涙
「これが目的だったのかもしれない」

「え?」

「なるほど。大いなる意志か」

 ユラウスはつぶやき、星々が輝き始める空に目を移す。

 誰かが思ったのかは解らない、計画すらされたのかも疑わしい。

 それでもたったいま、ここにはいがみ合いもなく一つとなっている。

「これが続くといいね」

「そうね」

 多くの種族がまとまった姿をこの先、見ることはないかもしれない。

 モルシャたちは記憶に焼き付けるように、その風景をしばらく無言で眺めていた。

 ──それぞれの種族は魔導師たちにより元の場所に帰っていく。

「また、会えるかな」

 ひとときを過ごし、共に闘った仲間たちも自分たちの場所に戻る時がきた。

「うむ、また会おう」

「貴方たちに出会えたこと。感謝します」

「たまには遊びに来てよね」

「なんだかんだで楽しかった。空まで来るのは難しいだろうけど、機会があったら歓迎するよ」
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