穢れなき獣の涙
「それじゃあ」

 手を振り、ポータルに吸い込まれていく。

 残されたユラウスとシレアは互いに見合う。

「ぬしはこれからどうする」

「旅を続けようと思う。お前は?」

「わしは、あの森に戻る事にした」

 それに少し眉を寄せたシレアに笑みを見せ、

「心配はいらぬよ。今度は森の奥ではなく、入り口に居を構えるつもりじゃ」

「そうか」

 ユラウスは、笑みを返したシレアに微笑み、表情を険しくした。

「彼らには話さぬつもりか」

「会えばいつかは気がつく」

 ドラゴンの力に目覚めたシレアは、すでに人としての存在ではなくなっていた。

 そうでなければネルサには勝てなかっただろう。

 しかし、これが代償なのかとユラウスにはどこか悔しさが残る。

「古き友が蘇ったと思えばわしは嬉しくあるが。おぬしはそれで良かったのか」
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