穢れなき獣の涙
「悪くはないな」

 なんともあっけらかんと答えられ、ユラウスは唖然とする。

 シレアは強大なるパワーと、永遠とも言える命を得た。

 それはまさに「ドラゴン」と呼ぶに相応しい存在となったという事に他ならない。

 人にはとても大きい、大きすぎる責任を負うものだ。

「まったく、おぬしという奴は」

 相変わらずのシレアに呆れて肩をすくめた。

「おぬしはそれでよい」

 出会ったときと、まったく変わらずそこにいる。それでこそシレアだ。

 そのとき、聞き慣れた鳴き声がシレアの耳に届いた。

「ソーズワース」

 嬉しそうに駆けてくる旅の友に両手を広げた。

 魔導師たちが気を利かせてシレアのカルクカンを連れてきてくれたのだ。

 それに礼を言うように頭を軽く下げ、ソーズワースの顔を撫でる。

 それを見たユラウスは目を丸くした。
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