穢れなき獣の涙
──朝、干していた魚を片付けて旅支度を始める。
いわく付きの森はとても広く、例の怪物が現れるという地点まではかなり遠い。
このまま北を進み、夜になると薪を集めて火をおこす。
シレアは夜食に魚の干物を食べながら、小さく溜息を漏らした。
「そろそろ獣の肉が欲しくなってきた」
欲張った訳でもないのに大きな獲物になってしまった事が悔やまれる。
さすがに干物が沢山ある中で他の獲物を捕る訳にはいかない。
とはいえ、魚ばかりでは体にも良くない。
明るくなったら小さなねずみを探すか。
そんな事をぼんやりと考えながら干物を口にしていると、遠くから何かがゆっくり歩いてくる音がした。