穢れなき獣の涙
◆第二章-声の主-
*暗き森の鼓動
明け方に出発し、太陽が真上近くに昇る頃には周囲を木々が覆い尽くしていた。
目の前にうっそうと生い茂る草木を見つめる。
森の奥に目をこらすと、思っていた以上に深い森だという事が窺えた。
魔物の棲む森と言われるだけあって、地面から突き出た樹木はどれも異様に曲がりくねり、幹(みき)を支えている根はまるで荒波のようにうねっている。
そのままの名前で拍子抜けしそうだが、他に形容できる言葉が無かったのだろう。
それが返ってこの森の不気味さを引き立たせていた。
ソーズワースの緊張を和らげるように首をさする。