穢れなき獣の涙
「なんてことをするんじゃい! 火弾(ファイアボール)程度の魔法だったから良かったが、むやみに魔法反射(マジックリフレクション)などかけるものではない! 危ないじゃろうが!」

 左手に持つトネリコの杖を振り回して捲し立てた。

 その男はぱっと見、五十代ほどと見受けられる。

 シレアよりもやや背の低い男の言葉を黙って聞いていたシレアだが、

「魔法を撃ってきたのは誰だ」

「む……」

 それに銀色の瞳を泳がせ、

「おぬしの力を試したのじゃ!」と言い放った。

「ならば返されても文句は言えない」

「ぐっ」

 男は声を詰まらせ、シレアから視線を外して素知らぬふりをする。

 どう考えてもたった今、考えた理由に呆れて肩をすくめた。
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