穢れなき獣の涙
「エルフは恵まれた種族だ」

 ふと、ユラウスは馬を進めながらつぶやいた。

「美しい容姿に秀でた技術。そして長き命を持つ。我らより遅く誕生した種族じゃが、なんと羨ましい事か」

 彼ら古の民は、最も精霊に近い種族といえる。

 それ故なのか、種族としての特徴はこれといってあまり見られない。

「古の民にも良いところはあるだろう」

「魔法と先詠みの力くらいじゃな。まあ多少、鍛冶はこなしておったが」

 皮肉を込めた物言いに青年は小さく笑う。

 ユラウスが言うほど、古の民に優れた技術や文化がなかった訳じゃない。

 彼らから社会性というものが生まれ、そこから沢山の発明がなされた。

 それらは他の種族に広まり、発展してきたものが今も多く存在する。

 所謂(いわゆる)、文明の祖ともいえる種族だ。
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