穢れなき獣の涙
◆第三章-美しき種族-

*雨の出会い


「どこのエルフに会うつもりなんじゃ?」

 続く平原を進みながらユラウスが尋ねる。

「草原の民を考えている」

 シレアは森の民には一度、会ったことがある。

 豊かな森に住むエルフは、とても高く真っ直ぐな木々の上に家を建て、吊り橋でそれらをむすんで行き来していた。

 身軽で気さくな彼らは、シレアを快く迎えてくれた。

 言い方を変えれば、楽天的ともいえる。

 しかし、彼らの明るさは人間のそれとは異なり、多少の違和感を禁じ得ない。

 エルフという特殊な種族ならではのものかもしれないが、多くの人間を見てきたシレアでも呆れるほどの楽観視を垣間見れば溜息を吐くしかない。

「草原に住むエルフか。森の民より好戦的だと聞く」

 エルフは植物だけを食べると思われがちだ。

 食べているものはエルフによって異なる。

 森のエルフは木の実を主食とし、ほぼ植物だけを食べている。
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