穢れなき獣の涙
「馬はこちらに」

 アレサが言うと、他のエルフが手綱を渡せと手を差し出す。

 近くでシレアたちを見つめるエルフの中には、カルクカンが珍しいのか引かれていくソーズワースの姿を目で追う者もいた。

 そうして他の入り口とは異なり、見事な造形の施された洞窟の前で立ち止まる。

 細部にまで細かく美しい彫刻は、そこにいる者の高貴さを物語っていた。

「武器を」

 また別のエルフが手を出す。二人は見合い、小さく溜息を吐き出して剣を渡した。

 杖も渡せと催促されたユラウスは、これは体の一部だと丁寧に断る。

 一瞬、空気が張り詰めたがそれ以上は無理に奪われる事もなく、そのまま洞中に促される。

 白い岩壁の洞窟内はひんやりと涼しく、一定間隔でロウソクが灯されていた。

 壁には、絵画がかけられているように彩色がされていて冷たいイメージは無く、美しい種族に見合った図柄に溜息が漏れるほどだ。




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