モノノ怪-血夜桜編-
そうして暫く沖田様と2人きりになっていたら、廊下が騒がしくなり、歳三様が顔色を悪くさせてやって来てくださった。

「珠姫!?」

歳三様の手が私の頬に触れた。

「歳三様…」

歳三様のお顔を見たら、今まで我慢していた涙が次々に溢れ出す。
歳三様は何度も拭って下さった。
続いて斎藤様も入ってきた。

「蘭医をお連れしました。」

「斎藤、総司。助かった。」

「お安い御用ですよ。」

「当然の事をしたまでです。」

沖田様は私の手を離すとお医者様とは入れ違いに、
斎藤様と部屋を去る。
歳三様はずっと不安そうな顔をする私に寄り添って下さった。

「…………。」

お医者様は直ぐに診察に入ってくださった。
私は不安で押し潰されそうになる。
診察が終わったのか、器具を片付けるお医者様に、
歳三様が不安気にお尋ねなさる。

「どうなんだ?先生。」

「…………残念ながら。」

先生は重い口を開いて下さり結果を教えて下さった。
やはり子供は死んでしまった。
太陽を見ることなく死んでしまった。

「ッ!?」

私の目から涙が溢れる。

「そうか。」

歳三様は感情の読めない顔でただそう言った。

「ッごめんなさい!!」

私はまだ膨らんでいるお腹に手を当てて、謝った。
私が軽はずみな行動をしなかったら…

この子は外を見ることもなく、こんな結果に終わらせてしまった自分が凄く憎かった。

この頃はそう思っていた。

私の体にも悪いし、せめて亡骸だけでも土に埋めたいという希望で、
私の体から亡骸を取り出した。
その手術の際に私は意識を手離し、眠っていた。

その頃新選組の間では。
珠姫の手術を見届けた歳三は静かに皆が集まる襖を開けた。

「計画通り、珠姫の腹のやや子は死んだ。ご苦労だったな。総司。」

部屋に座っていた総司をみて、歳三はそう言った。

「ほんと。気配を読むのに長ける珠姫ちゃんに近づくの、
凄く大変だったんですよ。」

笑顔でそう言う総司に歳三はもう一度労りの言葉をかける。

「珠姫は既に俺達を信じきっているようだ。
もう時間をかける必要もあるまいな。」
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