モノノ怪-血夜桜編-
私の体は良くなるどころか、日に日に悪くなる一方だ。
まるで悪い薬を飲んでいるかのように……
猫は私に朝、昼、晩の食事を運ぶ人達を威嚇し続ける。

いつも私の傍で寝ている以外には動かない。

私を守るように…


「お前はいつも私と居るのね。」

小さな頭を撫でるとスリスリと寄ってくる。

「お前は自由にしていいのよ?」

そう言うのに私の傍を離れない。
そう思いながら撫でていると、猫はいきなり立ち上がり毛を逆立て威嚇を始めた。

「珠姫。」

それと同時に廊下からやって来た土方様。

「土方様…」

「体はどうだ?あまり良さそうではないと聞いたが…やはり顔色が悪いな。」

ドシリと座りながら私の頬に手を添える。
酷く温かいその手にホッとする。


ニ゙ャァ!!


猫が土方様に襲いかかる。

「こいつは俺が気に食わないらしい。」

猫の攻撃を避けると首根っこを掴み、苦笑いをすると私に差し出した。

猫はずっと土方様に威嚇の声を上げ続けていた。


「どう、したのかしら…?」

「そう言えば、こいつはどうしたんだ?」

「えっと…分からないんです。」

改めて聞かれると分からない。この子はいつの間にか私の側にいた。
何時きたのかなんて…覚えていない。

「分からない?」

「はい。いつの間にか…こうして居るようになって…」

土方様を威嚇し続ける猫の背を撫でながら、私は土方様に返事をする。

「そうか。………猫、好きか?」

土方様の問いに黙って頷くと土方様は笑って私の頭を撫でてくる。


シャァー!!


一層猫の威嚇が酷くなり、土方様はすぐに離れると、仕事があるからと部屋を離れた。
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