モノノ怪-血夜桜編-
「トシ…」

近藤様はそう言って土方様を見つめる。

「僕も土方さんに賛成ですよ。」

何時から立ち聞きをしていたのか、
沖田様までいらしていた。

「総司、何時から聞いていた。」

土方様は驚くよりも、面倒くさそうな顔をされていた。
そんな土方様の態度を見ても、
ヘラリと笑ってかわす彼も、なかなか原黒だと思う。

「珠姫に『昨夜歌ってたろ。』って言っていたとこからです。」

(それって、最初から居られたって事じゃないですか。)

「つまり、最初からってか。」

私と同じことを考えていらっしゃったのか、
土方様は呆れながら溜め息と共に、
そうお言葉を吐き出された。
沖田様は相変わらずの感情の読めない笑顔で、私の部屋に入り、座る。

「ま、兎も角、僕もあの人は好きじゃないですよ。
いっそ斬り殺しちゃいます?」

さらりと“斬る”“殺す”と話すのは、
沖田様の口癖のようなもの…だと思う。

「総司!滅多な事を言うんじゃない!!」

近藤様は怖い顔で沖田様をお叱りになられた。

「………冗談ですよ。
でも芹沢さんよりも、近藤さんの方が局長らしいっていうのは本当です。」

沖田様は表情を固くされて仰った。
この表情をされる沖田様が真剣だというのは、もう見知った事だ。

試衛館からの同士の方は、近藤様を支持されているらしい。
よく分からないけども、
壬生浪士組も大変なのだと思うのは確かだ。

「総司もありがとうな。」

近藤様は微笑んでおられたけれども、
きっと本気では無いんだと思う。
土方様と沖田様の溜め息が大きく聞こえた。
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