モノノ怪-血夜桜編-
土方様の苦労はまだまだらしい。

そうして話していると、斎藤様、永倉様、原田様、藤堂様、井上様、山南様達の、
所謂試衛館の同士だという、皆様が集まってきた。
皆様、芹沢様の態度にはそれぞれ、ご不満があるらしい。
壬生浪士組も大変だと思った。

「珠姫、こんな話ばかりで、つまらなくないか?」

「いいえ。皆様のお話しを聞けるんです。
私も皆様と打ち解けたような気がします。」

原田様が喋らない私を心配して下さったのか、苦笑気味に、声をかけて下さった。
その言葉に私はすぐに否定をした。

最初の頃は、この男所帯で、女性が居ない環境に凄く戸惑い、
肩身の狭い思いをしていた。
でも、前の主人とは違い、私を丁寧に扱って下さったことに、
とても感謝している。
芹沢様も私に歌えと申し付けるが、
声の調子が悪かったり、気分でなかった時は、
すぐに止めてくださる。
あの人も大概不器用なのだと、私は思うのだ。

「珠姫は仲間だぜ!!」

藤堂様がお叫びながら仰った。
その言葉と行動に驚いて、思わず仰視してしまった。

「もちろんだとも!!珠姫君も仲間だ!!」

「これだけ一緒に居るんだ。当たり前だろう。」

近藤様が頷き、皆様も頷いた。土方様は“当たり前”と仰った。
本気で驚いてしまった。


そしてこの頃は一番輝いていたように私には思える。

その後、上からの命令で、近藤様達は芹沢派を暗殺することになる。
そして、近藤派率いる『新選組』が誕生する。

新選組は池田屋事件等を通して、有名にはなるが、
京の人にとっては、壬生浪士組時代の人斬り集団という印象がが強く、
嫌われ者・厄介者扱いをされてしまう。

それでも彼等を知れば、京の人が恐れる程、残忍でもなければ、人斬りでも無いことは、
私が知っているつもりだった。
< 6 / 19 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop