モノノ怪-血夜桜編-
彼等が芹沢さんを暗殺して、早1年。

彼等とは大分打ち解け合えた。
私は家事を任され、想い人が出来る位に。

暫くは毎日が楽しくて、暖かかった。

「珠姫!今日俺非番でさ。」

縁側でのんびりしていた私を見かけて、
やって来たのは、藤堂様…いや平助君だ。

「平助君、どうしたの?」

非番だった彼は、京の有名や甘味屋さんで、
力がある故に、外に出ることが困難な私の為に、
お土産を買って下さったのだとか。

「珠姫甘いの好きだろ?」

「わぁ金平糖!!ありがとう。平助君!!」

「ヘヘッ気にすんなって!!」

平助君は最年少で幹部になった方だ。
私よりも年下だけども、大人負けの腕前を持っている。
それでも彼の見せる年相応な感情はとても可愛くて、
私はよく彼と話すことが多い。

「金平糖、高くなかった?」

「全然!珠姫の為なら安いもんだぜ!」

お土産をくれた、平助君の為に、私が歌を歌うのは最近では定番になっている。

歌を歌っていると、沖田さんや永倉さん達だけでなく、
近藤さんや山南さん、土方さんまでもがいつの間にか集まっていて、私の歌を聞いているのだ。

「皆なんだよ〜!!俺が聞いてんのにさ。」

機嫌が悪くなってしまう平助君に、茶々をいれる皆が、面白い。

「俺達だって珠姫の歌は聞きてぇんだよ。」

永倉さんは平助の頭を撫で回す。
平助君の髪が酷く崩れてしまう。
平助君はそれにも怒ろうとしたところに、沖田さんが笑って言う。

「平助君だけ独り占めなんて、酷いよね?」

沖田さんの笑みは表面上で…目は笑っていなかった。
当人ではなかったのにも、
原田さんも顔色が悪くなった。

「良いだろうが。別に減るもんじゃない。」

今まで腕を組んで傍観していた土方さんが、
口許を穏やかにして、平助君に言う。

「珠姫も皆にきいてもらいたいかもしれねぇじゃねぇか?な、珠姫?」

原田さんに振られて、私は驚きながらも、正直に離す。

「私の歌を聞きたいとおっしゃる方々が
他にもいらっしゃるなら、私は構いません。」

へにゃりと皆に笑いかけてみる。
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