恋華(れんげ)
しばらくして“あたし”というたった一人の観客だけのライブが終わった。
とても自分勝手な考え方だけど、あたしにとって、そのライブはあたしのためだけに行なわれたライブのような気持ちさえした。
だから…
「パチパチパチパチ…」
あたしはささやかな感謝の意味を込めて、男の人に拍手を贈った。
「ありがとな。前にも何度か俺の歌、聞いてくれてたことあるよな?」
「え?ちゃんと覚えてるんだ」
「演奏中もな、ちゃんと人の顔は見えてんだ。だから“あ。この人また来てくれたんだ”とか思って内心喜んだりとかしてる」
「へぇ。実はあたしも音楽やってるから、あなたの歌はなんとなく前からずっと気になってて…」
「音楽って?」
「ピアノ。クラブでピアノ弾いてるんだ」
「へぇ、クラブのピアノ弾きか…」
「うん。だから夜のコノ時間は仕事に出てるときのほうが多くて、最後まであなたの歌をちゃんと聞いたのは今夜がはじめて」
とても自分勝手な考え方だけど、あたしにとって、そのライブはあたしのためだけに行なわれたライブのような気持ちさえした。
だから…
「パチパチパチパチ…」
あたしはささやかな感謝の意味を込めて、男の人に拍手を贈った。
「ありがとな。前にも何度か俺の歌、聞いてくれてたことあるよな?」
「え?ちゃんと覚えてるんだ」
「演奏中もな、ちゃんと人の顔は見えてんだ。だから“あ。この人また来てくれたんだ”とか思って内心喜んだりとかしてる」
「へぇ。実はあたしも音楽やってるから、あなたの歌はなんとなく前からずっと気になってて…」
「音楽って?」
「ピアノ。クラブでピアノ弾いてるんだ」
「へぇ、クラブのピアノ弾きか…」
「うん。だから夜のコノ時間は仕事に出てるときのほうが多くて、最後まであなたの歌をちゃんと聞いたのは今夜がはじめて」