恋華(れんげ)
「そっか。今夜はお客さんがいてくれたから、演奏にも力が入ったよ。最後まで聞いてくれて本当にありが…」

…と、そこまで言ったところで…



「ぐぅ~…」



…と男の人のおなかが鳴った。


「ぷっ」

あたしは思わず吹き出してしまった。


「俺、歌い過ぎてエネルギー使い果たしちまったからさ、実は今ハラがぺっこぺこ」

「フフッ」

「あのさ……もし晩メシまだだったら……そこらでなんか食ってかねぇ?」


まだ名前も知らない男の人。

そんな男の人からの夕食の誘い。

でもあたしはもう少しこの男の人と話をしてみたい気持ちだった。


だから即答した。


< 102 / 201 >

この作品をシェア

pagetop