恋華(れんげ)
そして博士モドキはその場から一目散に走り去ってしまった。



「んんっ…」



「もういいよ」って言いたいんだけど、男の人の唇があたしの唇に重なっていて、何もしゃべることができない。


「んんーっ…」


だから、あたしは両手を伸ばして男の人のカラダをなんとか押しのけた。


「わ、悪りぃ。急にキスしたりして」

「………」

「まさか“ファーストキス”とかじゃなかったよな?」

あたしは黙ってうなづいた。

「よかった…。もしファーストキスを奪ったんだとしたら責任重大だからな……」

「………」

「まぁ、なんてゆーか、あーいうヤツには何時間もクドクド説明するよりも、目の前の現実ってヤツを見せつけてやるほうが手っ取り早いと思ったんだ」

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