恋華(れんげ)

あたしの部屋にお泊まりにきていたカレが、それまで大きな音が出ないように注意しながらギターを扱っていたのに、間違って音を出してしまったみたいだった。


「なんか今、音がしなかった?」

電話の向こうにも今のギターの音が聞こえてたみたい。

「ひょっとして、いま部屋にオトコが来てるとか?」

千恵はあたしとカレとのことを何も知らない。

「えっ、オトコ!?」

「まさか同棲してるとか?」

「ち、ちがうよおっ!!」

あたしは露骨に否定してしまった。

もし千恵に「年下の売れないミュージシャンと付き合ってる」なんて言ったら、絶対に反対されるに決まってるから……。


「白状しろ!オトコと同棲してる、って!?」

「ちがうんだ、って……そう、ちがうんだ」

「じゃあ、さっきの音はなによ?」

そのとき、あたしはとっさにウソをついた、



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