恋華(れんげ)
「どーせ、また合唱部のヘルプのハナシでしょ?」とあたしは思った。
だけど帰宅したあたしを訪ねてきたのは千恵ひとりだけじゃなかった。
あたしの嫌いなオトコ“桜庭寛也”が、なぜだか千恵に同伴していたからだ。
結果的に、あたしは生まれてはじめて自分の部屋にオトコを入れることになった。
あたしは床に正座をしているアイツを横目で見ながら、千恵に小声で
「なんで、あの人まで連れてくんのよ…」
と耳打ちした。
「ごめんね」
でもアイツにはあたしの声が聞こえてたみたい。
「日曜日なのに、家にまで急におしかけてきたりしてホントにごめん」
「いえ、別にいいですけど…」
そーいえばアイツとハナシするのって、実はこれがはじめてかも…。