恋華(れんげ)
あたしのほうなんか全然見てないし。

「どーしたの?バイト行かなかったの?」

「ごめん、今、ちょっと話しかけないでっ」

「え…」

その言い方がちょっと冷たい感じがした。

「いや、今ちょうど新しい曲のイメージが浮かんできちゃってさ、“バイトなんか行ってる場合じゃねぇ”って感じ?」

「ちゃんと向こうの人には“お休みします”って連絡はしたの?こないだ無断欠勤してめちゃめちゃ怒られたじゃない?」

「したよ、したしたっ」

その言い方がいかにも“うっとおしい”って感じだった。

新しいギターを買ってあげてからというもの、カレはますますギターに夢中になって、最近ではバイトも休みがちなってる。

「あーもぅ!ごちゃごちゃ話しかけるから分かんなくなっちゃったじゃねぇかよっ」

「ご、ごめん…。でも、もう夜も遅いし、他の部屋の人たちの迷惑だから、そろそろギター弾くのやめたほうがいいんじゃない…?」

「別に演奏してるわけじゃねぇし、ちょっとくらい音を出してもココは防音がしっかりしてるから大丈夫だよ。それより“あんま話しかけるな”って」

「………」
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