恋華(れんげ)
「だから“俺には時間がねぇんだ”って。“いま曲づくりで忙しいからバイトなんかしてるヒマはねぇんだ”って」

「別にバイトしながらでも曲づくりはできるよね? 前は夜にバイトして、昼間に曲づくりをしてたじゃん?」

「…!」

「もともと“昼間は曲づくりに専念したいから”って、夜の交通誘導員のバイトをしてたんでしょ?」

「だから“バイトしてる時間がもったいねぇんだ”って。何度も同じこと言わせるなよっ」

明らかにカレはイラついてる。

「一日もはやくメジャーデビューするためには、1時間だって多く練習とか創作活動に時間をかけなきゃいけねぇんだよ」

「………」

「蓮華だってさ、俺がメジャーデビューしたらうれしいだろ?」

「もちろん、そうだけど…」

「俺がメジャーデビューして有名になったら、いいスタジオでいい機材使って、もっといい曲がいっぱい作れるようになるんだぜ」

子どもみたいに目を輝かせてるカレ。

「曲が売れれば、もちろんカネだっていっぱい入ってくる。そうなりゃ、今まで蓮華に借りてたカネなんか利子をいっぱい付けて返してやるさ」
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