恋華(れんげ)


「お疲れさまで~す!」


コンビニに出勤したあたしは、同じバイト仲間で大学生の“髙木一平”にあいさつをした、むしろいつもより元気な声で……。


「おつかれぇ~ッス」

「今日は、もう“アイツ”現れた?」


いまあたしが言った“アイツ”とは、ストーカーの博士モドキのこと。

アイツ――いや“沢村貴志”があたしの部屋にお泊まりしに来るようになってからというもの、博士モドキは自宅にまで現れることはなくなっていた。

勤務先であるクラブのほうでもマネージャーがアイツの出入りを禁止にしてくれた。

だけど、あたしの昼間のバイト先であるコンビニだけは、アイツが“お客さん”として来て、商品を買ってくれる以上、追い返すこともできないでいた……。


「“現れた”ってゆーか、電話かかってきたッス。たしか10時頃ッス」

「え…。電話…?」

「はい」

「で、アイツなんて言ってたの?」
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