恋華(れんげ)

「大丈夫っ?」

…なんて言って助け起こすような人間じゃなく、逆に放っておいてくれるのが千恵だ。

あたしには千恵のそーいうところが、逆にちょうどよかった。

だから高校を卒業してからも、ずっと友達でいられたのかもしれないと思う。



あたしにとって“奥谷千恵”は、ただ一人の友達といっても言い過ぎじゃないと思う。

高校時代には憧れの桜庭センパイの役に立ちたい一心で、無理矢理あたしに合唱部のヘルプをやらせたこともある。


高校卒業と同時に働きはじめたあたしとちがって、千恵は短大に進学をした。

そしてバイト先で知り合った2コ年下の男とラブラブになり、大学卒業後にムコ養子に迎えるというカタチで結婚、現在は地元で“カフェ”を営んでいる。


いまだに行く先も分からず放浪の旅を続けているあたしとは真逆(まぎゃく)の人生をおくっている――――



「ところで注文はなんにする?」

「カフェラテにするよ」
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