恋華(れんげ)

「了解~♪」

あたしがカウンター席に腰を下ろすと、千恵は手馴れた手つきでカフェラテの準備にとりかかった。


千恵たち奥谷夫妻の営なむ小さなカフェ。

そこは特にこれといった人気メニューもないお店だったんだけど、駅の真ん前という最高の立地条件のおかげで、ほぼ一日中お客さんの流れが途切れることはないみたい。


「そーいえば、ダンナの姿が見えないけど、ひょっとして“若いオンナ”のところにでも行ったとか? ウケケッ」

あたしは意地悪そうに笑ってやった。

「…ってバカ! お客さんの前でヘンなこと言わないでよっ…」

千恵がほっぺたを真っ赤にして怒った。

あたしの眼中にはなかったんだけど、店内には若い女の客が何人かいて、そのコたちがクスクス笑っていたんだ。


「こーちゃん、今、倉庫に在庫確認に行ってるだけだよ」

千恵のダンナは千恵より2コ下。
奥谷光一だから“こーちゃん”って呼んでる。

「なァ~んだ、つまんねーの」

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