恋華(れんげ)
「それに、いい? そーいうの“自分のことを棚に上げて”っていうんじゃないの?」

「え…」

「あたしが若いコに負けてるって言うんなら、同い年のあんただって負けてんじゃん」

「ゲッ……やぶ蛇だった」


たしかに…

たしかにあたしは“沢村貴志”を若いドロボー猫ムスメに寝取られた……。


「アンタもいーかげん職を転々とするような生活から足を洗って、そろそろ結婚したらどぅ? うまくいけば“専業主婦”ってことで、外で働かなくてもすむかもよ」

「やだ」

あたしは即答した。

…ってゆーか、さすがにもう2度とオトコを好きになれないような気さえしてる……。


「あのねーっ…。あんたがフリーターの生活から脱出できる方法をせっかく教えてあげたのに、なに、その態度!?」

「他人に助けてもらわなくちゃいけないほど、あたし、か弱くないから」

「“なんでオトコと別れたのか”なんて訊くつもりないし、そーいうシチュエーションなら他人が信用できないのも分かるけど…」
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