恋華(れんげ)
「あたし的には、蓮華は地元に帰ったほうがいいんじゃないかって思うよ」
「え?」
「近くに全国チェーンのドラッグストアーができたせいで、あんたのお母さんの薬局もたいへんなんでしょ?」
「なんか、そうらしいね」
「だったら地元に帰って…、この町でお母さんの薬局を手伝ってあげたらいいじゃん」
「あたしは自立した女を目指すんだっ。そして東京で死んで、東京の土になるっ」
「バカじゃないの?」
カッコつけて言ったあたしを千恵が茶化した。
「バカっていうほうがバカなんだよ」
「じゃあ、蓮華はバカだね。あたしのこと、いつもバカ、バカ言ってんじゃん」
「うるせー」
「ヘックション!」
そのとき大きなクシャミをして千恵のダンナが店の奥から現れた。