恋華(れんげ)

やがて夕方になり、東京へと戻る電車に乗るために駅に向かって、駅前の商店街をぶらぶらと歩いていたあたしは…、

「あれ? 池田さんじゃない?」

…って不意に誰かに声をかけられた。


振り向くとそこに、自転車の前と後ろに子どもを乗せ、さらに買い物袋をハンドルの両端にぶらさげたオバさんがいた。


「え…?」

誰だっけ……?


思い出せないでいるあたしに向かってオバさんのほうが口を開いた。

「あたし、柴田。柴田まさみよ。中2のとき同じクラスだったんだけど覚えてない?」


「あ~…」

いたいた、たしかにそんなコいたよっ。

でも中3になってクラスが別々になったし、もともとトクベツ仲がよかったワケじゃないし、悪いけど完全に忘れてマシタ……。


…ってか!


このオバさんがあたしと同級生!?
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