恋華(れんげ)

「ありがとう…ございます…」

この桜庭というオトコ、こーいうさりげない気づかいができるあたり、思ってたよりずっとオトナなのかもしれないと思った。



だけど、その気づかいが女子部員たちの嫉妬の炎に油を注いだんだと思う。


アイツはアウェーのあたしを気づかってくれてるのか、ピアノを弾くあたしのそばにいつも一緒にいてくれた。

でも、そうすると必ずといっていいほどに音楽室のアチコチから突き刺さるような…、ときに殺意すら感じさせるほどの鋭い視線をチクチクと感じた。

結果的にみんなの“王子さま”を独占してしまっているのだから、それをこころよく思わない女子部員がいるのも仕方ない。

ジェラシーゆえのいじめ!?



翌週、今度は前日の部活が終わるときに、たしかに本棚に戻しておいたはずの“合唱曲のピアノの楽譜”がなくなる事件が起きた。

どんなに探しても見つからなくて、坂本先生からは、

「ちゃんと管理していないからよ!」

…って、また怒られてしまった。

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