恋華(れんげ)
あたしをのけ者にして、はじき出した合唱部。
その合唱部が、女子部員たちの“王子さま”である桜庭寛也を迎え、伸び伸びと歌っているところを見るのは、あたし的には面白くなかったからだ。
実際、合唱部は最優秀賞をとってしまい、あたしは「行かなくてよかった…」と思った。
自分ではもう合唱部にはなんの関係もない人間だと思ってた。
だけどアイツは、その後も“非合唱部員”となったあたしのことを映画に1回、そして遊園地にもう1回、連れていってくれた。
それが嬉しくて、そして「この幸せがこれからもずっと続けばいいのに」と思った。
だから、あたしは“幸せ”を逃さないために……そして“王子さま”を逃がさないために、3回目の遊園地からの帰り道、
「カナカナカナカナ…」
と“ひぐらし”の鳴く遊歩道の端っこで、あたしはアイツにキスをさせた。
ファーストキス―――――
だけどアイツの反応は意外だった。