恋華(れんげ)
採用内定なら“採用通知書”や入社するときに提出する“誓約書”、“身元保証書”なんかが同封されてるから、封筒がブ厚いはず。
だけど今回の封筒は薄かった。
だから開封しなくても、あたしには単に”履歴書を送り返してきただけ”だってことが分かってた。
あたしはタバコをくわえ、「チャキン!」とジッポーのライターで火を点けると、タバコの先端を“不採用通知書”に押し当て、流し台のシンクにひらりと捨てた。
「ちくしょう……」
1LDKの部屋の中で一日の疲れと共に「ふぅ…」と吐き出した紫の煙が、燃える“不採用通知書”の黒の煙と混じり合った。
換気扇をONにし、窓を開けてベランダに出たとき、ケータイにメールが届いた。
高校時代からの友人・奥谷千恵からだった。
『チエだよ~ん。おつかれ~。
今日の面接どーだった?
もし今度もダメだったら、
あたしを見習って
“永久就職先”を探せばぁ?うふ♪』
「なにが“うふ♪”だ。こないだの失恋の“かさぶた”さえできてない今のあたしにとっちゃ、そっちの就職だってキビシー、っつーの」