恋華(れんげ)
みんなの“王子さま”をひとり占めしようとしたあたしの欲深さが悪いのか?

それともタバコの味さえ知らなかったガキんちょのアイツが悪いのか…?


いや―――――


悪いのは親に隠れてタバコを吸ってたあたし。


結局、あたしとアイツは結ばれない運命だったんだと思う。

「オトコが欲しい」と願ったあたしに、よりにもよって“タバコを吸うオンナを認めないオトコ”を用意するなんて、運命ってヤツはあまりにも皮肉すぎる。


あたしは通学路の途中にある公園のトイレに駆け込んでタバコに火を点けると、


「でも人生なんて、こんなもんよね……」


と、つぶやいて紫の煙を「ふぅ」と吐いた。

あたしはそのとき、高校では教えてくれないことを教えてもらったような気がした。


「カナカナカナカナ…」

夕暮れどきの公園で“ひぐらし”があたしの代わりに、いつまでもいつまでも哀しげに鳴いてくれていた―――――
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