恋華(れんげ)
けど、地元のこととか、学生時代のこととか、いろいろ根掘り葉掘り訊かれるのは正直うっとおしかったし、ぶっちゃけ干渉しないでほしかった。
3ヶ月後、町工場を辞めたあたしは、その後、いろんな職を転々とし、そしていろんなアルバイトを続けながら生きてきた。
21歳のいま―――
次の仕事が見つかるまでの“つなぎ”として、昼間はドラッグストアのレジ打ちのパート、そして夜は場末のクラブに勤めていた。
“クラブ勤務”といってもホステスじゃない。
酒に酔ったオヤジどもにピアノを聞かせてやる“ピアノ弾き”だ。
結局、一度は捨てたはずのピアノ弾きの夢を、みっともなくゴミ箱をあさって、もう一度拾い上げたということだ。
もっとも“ピアノ弾き”とはいっても、所詮は場末のクラブのピアノ弾き。
客は綺麗なおねーさんに夢中で、誰もあたしのピアノなんて聞いちゃあいない。