恋華(れんげ)
あたしの演奏が終わると、客たちのあいだからパラパラとした拍手が聞こえてきた。
あたしは客に向かっておじぎをすると、わき目もふらず店の奥の休憩室へと向かった。
…と、そこへ、薔薇の花束を手にした30代後半という感じの男が現れた。
「今日の演奏も素晴らしかったですね」
花束なんて別に珍しくもない。
いくら場末のクラブのピアノ弾きとはいっても花束くらいはちょくちょくもらえる。
「これをあたしに?」
「はい。本数を数えてみてもらえますか?」
「えっとイチ、ニ、サン、シ…」
22本あった。
「お誕生日おめでとう」
「…!」
いつもなら男のキザな振る舞いを鼻で笑うあたしだったけど、その夜はちがった。
22本の薔薇の花束という“直球ド真ん中”の振る舞いに、あっけないほど、あたしはヤラれた。
あたしは客に向かっておじぎをすると、わき目もふらず店の奥の休憩室へと向かった。
…と、そこへ、薔薇の花束を手にした30代後半という感じの男が現れた。
「今日の演奏も素晴らしかったですね」
花束なんて別に珍しくもない。
いくら場末のクラブのピアノ弾きとはいっても花束くらいはちょくちょくもらえる。
「これをあたしに?」
「はい。本数を数えてみてもらえますか?」
「えっとイチ、ニ、サン、シ…」
22本あった。
「お誕生日おめでとう」
「…!」
いつもなら男のキザな振る舞いを鼻で笑うあたしだったけど、その夜はちがった。
22本の薔薇の花束という“直球ド真ん中”の振る舞いに、あっけないほど、あたしはヤラれた。