恋華(れんげ)
あたしはくわえタバコで苦笑すると、自慢の長い黒髪を後ろでまとめていたカラーストーンのヘアゴムをはずした。
日も暮れて涼しさを取り戻した風が、
「カナカナカナカナ…」
という“ひぐらし”の鳴き声を運びなから、胸のあたりまである髪をサワサワととかすのを心地よく感じながら、あたしは千恵にリダイヤルした。
そーいえば、あたしのケータイの通信履歴には最近、千恵の名前しかない……。
「もしもし」
「はァ~い。メール届いた?」
「何げにムカつくメール送んないで」
「心配してやってんじゃん」
「ウザっ…」
「…とか言いながら、あたしくらいしか友達いないじゃん。ホントはうれしいクセして。蓮華ちゃん、素直じゃないんだから。うふ♪」
「はいはい…、うれしー、うれしー……」
あたしは投げやりな感じで言った。
「で? どーなのよ、今日の面接の手応えってヤツは?」