恋華(れんげ)
別に、誕生日をひとりで過ごさないですむんなら“相手は誰でもよかった”っていうワケでもない。
なぜか、あの男からの誘いを断ることができなかったんだ。
あの22本の薔薇の花束を見た瞬間、まるで“魔法”にかかったみたいに、あの男の誘いを断ることができなくなってしまったんだ。
そう。あの男は魔法使い。
あたしに魔法をかけたんだ。
24時を過ぎても解けない魔法を―――
父親を知らずに育ったあたしには“ファザコン”のケがあることを自覚している。
そんなあたしが秋吉英二のようなオトコに出会ってなんの感情も抱かないはずがない。
それにどことなくジャン=レノっぽい雰囲気も漂っていたし♪
それからひと月後、あたしはレジ打ちのパートとクラブのピアノ弾きを辞めた。
そして、保険外交員として
あの男の会社に入社していた――――