恋華(れんげ)
すると工場長は、あたしの耳に顔を近づけて小声で言ったさ、

「コレ、池田さん個人の番号?」

…って。
んなワケねーじゃん!!


「いえ…会社から持たされてるPHSの番号ですけど……」

「じゃあ、池田さん個人のを教えといてよ」

「あたしの…ですか……?」

「今はあんまり時間ないし、今度、ゆっくりメシでも喰いながら、もう少し詳しく教えてもらうからさ」

そう言って笑う工場長の顔に、オトコという生き物の下心が見え見えだった。


でも…

それでも契約を取るためにはしょーがない。


「はい…では、そのときはよろしくお願いします」

あたしはさっきの名刺に自分のケータイ番号を書いて工場長に渡した。

「近いうちに連絡するよ♪」

「お待ちしております」

そう言って、笑顔で頭を下げるあたし。
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