恋華(れんげ)


「課長…」

「私がいいお客さんを紹介してやろう」

「え? 課長が…ですか?」

秋吉が車内でうなづくのを見て、あたしは全てを理解した―――



その日、太陽が傾きはじめた頃、あたしは秋吉と“オアシス”っていう名前のラブホテルにいた。

そこはまさに別世界。

エアコンは、白く目に見えるほどの冷気を吹き出していて、気も狂うほどの外の暑さがまるで嘘みたいだった。


ベッドの秋吉がタバコの煙を吐いて言った、

「まさにここは東京砂漠のオアシスだな」

あたしは秋吉の腕まくらの中で答えた、

「ありがとうございました。課長のおかげで大口の契約が取れました」


同僚の外交員たちがあと1件でも多く契約と取ろうと、この暑さの中、必死に外回りをしている時間に、あたしはオトコと冷房のきいたラブホにいたんだ。


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