恋華(れんげ)
「女の武器をフルに使って契約を取りまくってるなんて、池田さん、ちょっとズルしすぎじゃないですか?」
「そんなことっ…」
松野さんが言ってることもあながちハズレじゃない。
けど、モノには“言い方”っていうものがある。
なにも、そんな言い方しなくても……。
「ソレって思いっきり“ズル”ですよね?」
「ズル…」
「あたし達がこの暑い中、一日中歩き回って保険の契約を取っているあいだ、池田さんは課長と一緒にクーラーのきいたラブホテルにいたんですよね?」
最初は遠慮がちだった松野さんの口調が、いつの間にか強いものに変わっていた。
なるほど。
松野さんは、以前は2人で最下位争いをしてたあたしが突然トップになったことにココロの奥ではずっと嫉妬してたんだ…。
それを今日、あたしがトップになった“からくり”を知って、夜も眠れないくらいに悔しがってた、ってことなんだね……。