恋華(れんげ)


「バレちゃ、しょーがない」って、あたしは思った。

「でも、やっとこれでラクになれる」とも、あたしは思った。



途中から自分でも分かってたんだ。

秋吉の魔法のチカラを利用して、ズルして営業成績トップになったことへの罪の意識は感じていた。

だから、一日中、足を棒のようにして契約を取って回っている他のみんなに対して、後ろめたい気持ちはいつもあった。

みんなが陰でヒソヒソとあたしの悪口を言ってるのも知ってたし、だからいつも人目を気にしておどおどしていた。


でも、松野さんにハッキリ言われたことで、あたしは目が覚めたような気がする。

それに、逆にこれで気持ち的には少しラクになれたような気もする。

“罪の意識”と“後ろめたさ”から、ようやくあたしは解放される。

そして……、
自分の胸の中に誰にも言えない“秘密”を抱え込んでいた日々からも解放される。



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