恋華(れんげ)
「あたし、最初っから分かってましたよ、あたしとのことはタダの火遊びだって」
そう言うと、あたしはタバコをくわえて火を点けた。
「でも、それじゃ悔しいから、課長をちょっと困らせてみたくなってウソついたんです」
「え…ウソ……?」
「はい♪」
「ほ、本当にウソなんだね!?」
「はい、ウソです♪」
「そ、そうだったのか……」
ハンカチで額の冷や汗を拭う秋吉は、あからさまにホッとしているみたいに見えた。
「フッ。課長、ダマされちゃいましたね♪」
「キミもなかなかやるもんだね」
「大成功~っ♪♪」
あたしはくわえタバコで、両手Vサインをしながらそう言った。
そのとき信号が青に変わった。
だけど秋吉はそれに気づかなかった。