恋華（れんげ）
第２話　「学園の王子さま」
あたしは“桜庭寛也”がキライだ。


かといって“アイツ”は女子に嫌われるようなタイプじゃない。

むしろその逆で、ウチの高校の女子の中で、アイツのことを嫌っているのは、多分あたし一人だけだったと思う。


アイツは合唱部でピアノ伴奏をする２年生。

部活動の時間になると毎日のように音楽室の周りには、その姿を一目見ようという女子の人だかりができるほどの人気ぶり。

ある意味、ある種の“王子さま”



だけど……


金メダリストが世界一とはかぎらない。
ただ単に出場選手の中でイチバンだっただけ。
出場していない人たちの中に、それ以上の実力者がいないなんて誰も言い切れやしない。

あたしはそーいうふうに考える人間だ。

だからアイツがキライ。

あたしのほうがピアノ上手いのに…。
あたしの実力を知りもしないで、あんなヤツにチヤホヤしてんじゃない、ってーの。

別にアイツの人気に嫉妬してるんじゃない。
ただアイツの存在がなんかウザイだけ……。

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