恋華(れんげ)


けど、あとにして思うと、その夜のあたしには隙(すき)があった。

あたしは何の躊躇もなく疋田という男にメールを返信していた。

『ご心配いただきありがとうございます。
おかげさまで就職先も決まりました。
今回のことはご縁がなかったということで、
新しい職場で一生懸命がんばるつもりです。
わざわざメールまでいただきありがとうございました。では失礼いたします』



すると、あたしが返信してすぐに男からメールが届いた。

『おめでとうございます。お勤め先はどちらに決まったんですか?』


あたしは、

「なんで、どこに勤めるのか教えないといけないワケ」

…とつぶやきつつも、心配してくれているのを無視するのも悪いと思い、それでも少しヘンだと疑いながら…、

『音楽関係のお仕事です』

とだけ返信した。



すると今度もすぐに男からメールが届いた。
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