恋華(れんげ)
内心「ヘンだ…」と思いつつも、あたしは平静を装って男に言った、

「こないだはわざわざお気づかいいただいて、ありがとうございました」

「いえいえ、どういたしまして♪」

男は上機嫌な様子だった。

「ホントに蓮華さんだ♪僕、また蓮華さんに会えるとは夢にも思ってなかったよ♪」

「はぁ…」

男は“また逢えた”って言ったけど、あたしにはその男に関する記憶が全くない。


そこで思い切って訊いてみることにした。

「あの……ホントに失礼なことをお訊きして申し訳ないんですが……疋田さん、システムマックスの方なんですよね?」

「そうだよ♪ え?ひょっとして僕のこと、覚えてないとか?」

「えっと、あの……試験のときはすごく緊張してましたから、正直よく覚えていないんです。ごめんなさい」

あたしはウソをついた。

「面接官……の方じゃないですよね?」



「筆記試験の解答用紙を回収した者だよ♪」
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