恋華(れんげ)
センパイが高校卒業後、音楽大学に進学したところまでは知っている。
ひょっとして今もピアノに関係する仕事をしているのかな……。
「なんか“出来ちゃった結婚”らしいよ♪」
「へぇ、そうなんだ……」
指を骨折したセンパイの代わりにヘルプとして合唱部に参加したあの日から、もう7年以上は経ってるんじゃないかな……。
あたしにもセンパイにも同じ7年の時間が流れたはずなのに……、
あたしが妻子持ちの中年オヤジと不倫して中絶してるあいだに、桜庭センパイはちゃんとした恋人と純粋な愛をはぐくんで結婚、そしていよいよパパになるなんて……。
あたしは今も一人で、こんなところで、いったいなにやってるんだろ……。
なんか自分で自分がイヤになる……。
あのとき、あのままセンパイとうまくいってたら、あたしは今頃こんなじゃなかったのかもしれない……。
センパイ……桜庭センパイ……
思い出に浸りながら眠りについたあたしは、その夜、センパイの夢を見た―――――