セーラー服と、スーツ
「…病院だけは…」
必死に掴んでいる小さな手。
その間も、ポタポタと血が流れ落ちている。
「・・・」
どんな理由があろうが、今の状態じゃ行かなきゃいかんだろう。
「ダメ。病院行くぞ」
「イヤ・・・です」
「行かないなら、もう会わないぞ。病院行かないで何かあったら、俺の責任にもなるしな」
「え・・・」
「当たり前だろ?俺は、大人なんだから。危険な状態の子供を放置するんだから。あ、もしかしたら逮捕されるかもな」
「え!?」
「そうなったら、今日でお別れだな」
ちょっと言い過ぎだが、このぐらいでいいか。
みるみるうちに少女の表情が曇っていく。
「・・・行きます」
「よし。保険証持ってこい」
「・・はい」
半ば強制的に言わせると、少女は保険証をとりに自分の部屋に行った。
「はぁ・・」
一人になったリビングで、大きな溜息をついた。
料理食べにきただけなのに、何でこんなことになってんだ?
ていうか、あの年齢で病院嫌いとか・・・ガキかよ。
・・・・あ、いや、中学生はガキか。
「…お待たせしました」
「おぅ。行くぞ」
「…やっぱり」
「ダメ」
「…」
少女の足取りは重く、家から出て車まで向かう途中に何度か、こういう会話が繰り返された。